何年も前の事だけど、東大一般入試受験日当日の話
午前の試験が終わって休憩時間にトイレに行ったら、
窓から外を眺めている子を見掛けた
大きな幾何学模様のワンピ姿でふわふわな髪のおしゃれな子
正直汚いトイレだったけど、
窓枠を背景にしたフェルメールの絵画のような構図で思わず見とれた
ちょっと気になったので近付いて見てみたら、
窓の外には青い空とゆっくり流れる雲と、
真冬だけど常緑樹のせいできれいな緑が見えた
鵯や四十雀のさえずりも聞こえてくる
「東京なのに自然がいっぱいで綺麗な所だよね、思わず見とれちゃった」
その子がゆっくり振り返って優しい笑顔で話し掛けてきたので、
「そだね、すごくいい環境の大学ね」
って私も思わず笑顔になった
その後30秒くらいだけど、試験緊張したねとか、午後も頑張ろうねとか、
お互い励まし合ってその場は別れたよ
東京から遠く離れた田舎の出身だから一緒に受けた友達もいないし、
精神的に不安定になってた
会場にはキレイにお化粧してる子も多くて気後れもしてた
とにかく、私みたいのがこんな所まで来るなんて場違いじゃないか？って、
緊張感と焦りで頭の中がグルグルしてたんだ
でも、憧れの大学の絵画みたいな景色とその子との出会いで、
心が一気に安らかになったのを覚えている
午後の試験はそれはもう、実力がフルに発揮できたよ
運命の出会いって本当にあるんだね
まあ実際入学してみたらその子はいなかったんだけどね